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国連特別報告者ケナタッチ氏が安倍晋三首相宛てに送った書簡

2017年5月24日(水)

 「共謀罪」の趣旨を含む組織犯罪処罰法改正案がプライバシーや
表現の自由を制約する恐れがあると懸念を示している
国連特別報告者ケナタッチ氏が安倍晋三首相宛てに送った書簡。

国際人権法の規範や基準とどう整合性を取るかなど、政府の回答も求めている。

中日新聞に掲載された書簡の日本語訳(一部略)は次の通り。

プライバシーの権利に関する特別報告者の任務に基づく照会
                  2017年5月18日
内閣総理大臣 閣下


 私は、人権理事会の決議に基づき、プライバシーに関する権利の特別報告者としての私の権限の範囲において申し述べます。

 私は、組織犯罪処罰法の一部を改正するために提案された法案、いわゆる「共謀罪」法案に関し私が入手した情報について、閣下の政府にお伝え申し上げたいと思います。もし法案が可決された場合、法律の広範な適用範囲によって、プライバシーに関する権利と表現の自由への過度の制限につながる可能性があります。

 私が入手した情報によりますと、次の事実が認められます。(以下、法案の説明。略)

安倍晋三首相 閣下

内閣官房、日本政府


 さらに、この改正案によって、別表4で新たに277種類の犯罪の共謀罪が処罰の対象に加わることになりました。このように法律の重要な部分が別表に委ねられていることは、市民や専門家にとって法の適用の実際の範囲を理解することを一層困難にする懸念があります。

 加えて、別表4は、森林保護区域内の林業製品の盗難を処罰する森林法第198条や、許可を受けないで重要な文化財を輸出したり破壊したりすることを禁ずる文化財保護法第193条、195条、196条、著作権侵害を禁ずる著作権法119条など、組織犯罪やテロリズムとは全く関連性のないように見える犯罪に対しても新法が適用を認める可能性があります。

 報道によれば、新法案は、国内法を「国境を越えた組織犯罪に関する国連条約」に適合させ、テロとの戦いに取り組む国際社会を支援することを目的として提出されたとされます。しかし、この追加立法の適切性と必要性については疑問があります。

 報道によれば、政府は新法案に基づいて捜査されるべき対象は、「テロ集団を含む組織的犯罪集団」が現実的に関与すると予想される犯罪に限定されると主張しています。しかし、「組織的犯罪集団」の定義は漠然としており、テロ組織に明らかに限定されているとはいえません。新たな法案の適用範囲が広い点に疑問が呈されていることに対して、政府当局は、新たな法案では捜査を開始するための要件として、リスト化された活動の実行が「計画」されるだけでなく、「準備行為」が行われることを要求していると強調しています。しかしながら、「計画」の具体的な定義について十分な説明がなく、「準備行為」は法案で禁止される行為の範囲を明確にするにはあまりにも曖昧な概念です。

 これに追加すべき懸念としては、そのような「計画」と「準備行為」の存在と範囲を立証するためには、論理的には、起訴された者に対して、起訴に先立って事前に相当レベルの監視が行われることになると想定されます。このような監視の強化が予測されるところ、プライバシーと監視に関する日本の法律に定められている保護と救済のあり方が問題になります。

 NGO、特に国家安全保障分野に関する機密性の高い分野で働く人々の活動に、法律が潜在的影響を与える恐れも懸念されます。政府は、法律の適用がこの分野に影響を及ぼさないことを繰り返し述べているとされます。しかし、「組織的犯罪集団」の定義の曖昧さが、国益に反する活動を行っていると考えられるNGOに対する監視などを正当化する口実を作り出す可能性があるとも主張されています。

 最後に、法律原案の起草に関する透明性の欠如と、今月中の法案の急速な採択を進める政府の圧力によって、十分な国民的議論の促進が損なわれていることが報告で強調されています。

 提案された法案は、広範な適用がされる可能性があることから、現状で、また他の法律と組み合わせて、プライバシーに関する権利およびその他の基本的な国民の自由の行使に影響を及ぼしかねないという深刻な懸念を表明します。

 とりわけ私は、何をもって「計画」と「準備行為」が構成されるのかという点について極めて曖昧な定義になっていること、および法案別表には明らかにテロリズムや組織犯罪とは無関係とみられる過大な範囲の犯罪が含まれていることから、法が恣意(しい)的に適用される危険に懸念を示します。

 法的明確性の原則は、刑事的責任が法律の明確で正確な規定により限定されなければならないことを求め、もって何が法律で禁止されている行為なのかについて合理的に認識できるようにし、不必要に禁止される行為の範囲が広がらないようにしています。現在の形の「共謀罪」法案は、抽象的かつ主観的な概念が極めて広く解釈され、法的な不透明性を招きかねず、この原則に適合しているようには見えません。

 プライバシーの権利は、この法律の幅広い適用の可能性によって特に影響されるように見えます。さらには、法案を速やかに成立させるために立法過程を急いだことで、人権に有害な影響を及ぼす可能性があることにも懸念が示されています。立法の過程を短くすることは、この重大な問題について広範な国民的議論を不当に制限することになります。

 私に委任された権限で、特に、プライバシー関連の保護と救済について、以下の5点に着目します。

1.新たに提案されているテロ等準備罪においては、犯罪の存在を証明するため監視強化が必要になると考えられるが、新たな法律またはそれに付随する措置は、プライバシーを守る適切な仕組みを確立する特定の条文や規定を新たに取り入れることは想定されていない。これが現時点の法案に対するわれわれの評価です。

2.公開されている情報の範囲では、監視活動に対する事前の令状主義の制度化も予定されていないようです。

3.国家安全保障を目的とした監視活動を事前に許可するための独立した第三者機関を法令に基づいて設置することも想定されていないようです。このような重要なチェック機関を設立するかどうかは、監視活動を実施する個別の機関の裁量に委ねられることになると思われます。

4.さらに、捜査当局や安全保障機関、情報の活動の監督について懸念があります。すなわち、これらの機関の活動が適法であるか、または必要でも相当でもない手段によりプライバシーに関する権利を侵害する程度についての監督です。この懸念の中には、警察がGPS捜査や電子機器の使用の監視などの捜査のために監視の許可を求めてきた際の裁判所による監督と検証の質という問題が含まれています。

5.嫌疑のかかっている個人の情報を捜索するための令状を警察が求める広範な機会を与えることになることから、新法の適用はプライバシーに関する権利に悪影響を及ぼすことが特に懸念されます。入手した情報によると、日本の裁判所はこれまで極めて容易に令状を発付するようです。2015年に行われた通信傍受令状請求のほとんどが認められたようです。(数字によれば、却下された令状請求はわずか3%にとどまります)

 法改正案に関する情報の正確性や日本におけるプライバシー権への影響の可能性を決めてかかる気はありません。ただ、閣下の政府に対しては、日本が批准した自由権規約(ICCPR)によって課されているプライバシー保護に関する義務について注意したいと思います。ICCPR第17条第1項は、とりわけ個人のプライバシーと通信に関する恣意的または違法な干渉から保護される権利を認め、誰もがそのような干渉からの法的保護の権利を有することを規定しています。さらに、国連総会決議A/RES/71/199も指摘いたします。そこでは「治安上の懸念により、一定の機密情報の収集と保護は正当化されうるものの、国家は国際人権法に基づく義務に完全に従わなければならない」とうたわれています。

 人権理事会から与えられた権限の下、私は担当事件の全てについて事実を解明する職責を有しております。つきましては、次の諸点について回答をいただければ幸いです。

1.上記の各主張の正確性に関して、追加情報やご見解をお聞かせください。

2.組織犯罪処罰法の改正案の審議状況について情報を提供してください。

3.国際人権法の規範および基準と法案との整合性に関して情報を提供してください。

4.法案の審議に関して公的な意見参加の機会について、市民社会の代表者が法案を検討し、意見を述べる機会があるかどうかを含め、その詳細を提供してください。

 もし要請があれば、現在審議中の法案やその他の既存の法律を、国際法秩序に沿った適切なものに改善するために、謹んで専門知識と助言を提供して日本政府を支援したいと思います。

 最後に、立法過程が相当進んだ段階にあることから、私の見解では、これは即時に公衆の注意を必要とする事項です。したがって、私は閣下の政府に対し、この伝達が一般に公開され、プライバシー権に関する特別報告者の権限のウェブサイトに掲載されることをお知らせしたいと思います。プレス発表を準備し、私の懸念を説明するとともに、論点を明確にするために貴政府と連絡を取っていることを指摘する予定です。

 閣下の政府の回答も、上記ウェブサイトに掲載され、人権理事会での討議のために提出される報告書にも掲載されることになります。

 閣下に最大の敬意を表します。

ジョセフ・ケナタッチ
プライバシー権に関する特別報告者
 





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