JUNSKY blog 2017

政治関連・社会問題などについて書いてゆきます!

仏大統領選 極右・ルペン女史失速! 急進左派のメランション欧州議会議員が追い上げ!

2017年4月20日(木)

 フランスの大統領選挙は、今週末が最初の投票日だとのこと。

 長らく、この第1回目の投票で大統領が決まったことはなく、
いつも上位2候補による「決選投票」で事が決していると云う。

 この間、大衆的人気を集めてきた極右のルペン候補が、
この1週間ほどで徐々に失速し、世論調査での1位の座から転落!

 尤も、このような世論調査の『いい加減さ』は、トランプ大統領の
出現で明らかになった訳で、安心してはならないだろうが・・・
 イギリス(UK)のEU離脱も、離脱推進派さえ予測しなかった結果だし。

 ルペン氏の失速に対して、この処好感度が急伸してきているのが
急進左派のメランション欧州議会議員だという。
 アメリカ大統領選挙で、当初泡沫候補と見られていたサンダース氏が
クリントン国務長官・元大統領夫人と互角に戦ったことと似ている。

 支持層もサンダースの支持層と似通っていると云う。

France_President-Election_20170429-01.png
 3月(Mar)中旬から急上昇している朱色のグラフがメランション氏のもの
 一位との差は、僅かに2%。 これから上昇すれば逆転も!


ルペン氏失速、フランス大統領選は混戦に
 The Huffington Post 投稿日: 2017年04月20日 16時42分 JST
 執筆者: Geoffroy Clavel, Lydia O’Connor
 

 (前略)
 現在支持率が急上昇しているのはジャン=リュック・メランション氏だ。
 彼はポピュリストを自称し、アメリカ大統領選で旋風を巻き起こしたバーニー・サンダース上院議員と自身を重ね合わせている。
 保守系の統一候補フランソワ・フィヨン氏は妻や子供への不正給与疑惑でつまづいた。
 一時期支持率トップに立ったエマニュエル・マクロン氏は、元投資銀行員で過去には社会党に所属しており、オランド政権では2年間経済担当大臣を務めた。
 選挙戦の状況は劇的に変化してきた。一時はルペン氏が約3分の1の票を集めると見られていたが、ハフィントンポスト・フランス版の世論調査によると、現在は支持率で2位となっており、下位の2候補に対するリードもわずか3ポイントという状況に置かれている。
 「彼女は国民戦線所属の候補者として、大統領選での新たな記録を打ち立てることになるでしょうし、あらゆる選挙を含めても国民戦線にとっては歴史的な記録となるでしょう。しかし世論調査での彼女の勢いは衰えています」と、調査会社「Elabe」の政治研究部門責任者イヴ=マリー・キャン氏はハフィントンポスト・フランス版の取材にこう語った。
 「世論調査では、2月の時点でルペン氏の支持率は28%でしたが、現在は22〜23%。ルペン氏は選挙期間中に勢いをつけられていません」
 (以下略) 



 ただ、DIAMOND online の評価では、
極右のルペン と 急進左派のメランション が1・2位となって
決選投票に残った場合には、ルペンが勝つ可能性が高い
と想定している。

 欧州の現状が、ヒットラーが出てきた政治的背景と極似している上に
支持層も当時と似ているらしいので、恐ろしい展開が起こり得る?!

 以下のDIAMOND online の記事に依れば、この時点で
有力と言われる極右のルペンと
急進左派との間には僅か2%ほどしか差が無く、
いずれも20%前後の期待度
(私には、「支持率」とは言えない感じがする)
この差が、フランスの行く末の『大きな分かれ道』になるとは?
ナチスドイツの跳梁跋扈(この漢字、私は紙には絶対書けない)
を許したドイツの二の前になるのか?

     ************

仏大統領選はポピュリズムによる「新たなフランス革命」か
 田中 均 :日本総合研究所国際戦略研究所理事長
 DIAMOND online - 2017年4月19日
 

決選投票でル・ペン氏勝利も?
急進左派の急追で情勢緊迫
(以下、随時改行は引用者)
 今回の選挙では
極右国民戦線のル・ペン党首、
中道左派のマクロン前経済相、
右派共和党のフィヨン元首相、
左派社会党のアモン前教育相、
急進左派のメランション欧州議会議員
の5名が有力な候補者である。
最近の世論調査ではル・ペン、マクロンが肩を並べ、
フィヨン、メラションが追い上げているとされる。
 14日フランスの有力紙ル・モンドが報じたところによると、
ル・ペン、マクロンが22%で首位に並び、
メランションが20%、フィヨンが19%と僅差である。
これまでの予想ではル・ペン、マクロンが決選投票に残るが、
決選投票では極右を嫌う穏健勢力がこぞって
中道左派マクロンに投票するであろうし、
マクロンが大差で勝利するのではないかと見られてきた。

 しかし、ここに来て急迫している極左メランションがル・ペンと共に決選投票に残れば、ル・ペンが最終的に勝利する可能性があるというわけだ。

 こうした可能性を秘めたフランス大統領選挙の背景と影響について世界の趨勢の中で考えてみる必要があるだろう。脈々と流れていた反グローバリゼーションの勢いがポピュリストたちによって加速され、具体的形をとった最初の出来事は英国のEU離脱(Brexit)を決めた2016年6月の国民投票であった。これは11月の米国大統領選挙に引き継がれトランプ大統領の誕生となった。
(以下略:長いです) 





     *******************


ルペン氏失速、フランス大統領選は混戦に
 The Huffington Post 投稿日: 2017年04月20日 16時42分 JST
 執筆者: Geoffroy Clavel, Lydia O’Connor
 

 マリーヌ・ルペン氏の選挙活動に暗雲が立ち込めている。

2011年からフランスの極右政党「国民戦線」の党首を務めてきたルペン氏は、4月23日に行われるフランス大統領選の第1回投票で2位に入ると予想されている。そうなればルペン氏が大統領になる可能性は残されるが、5月7日の決選投票では勝ち目が薄い。

人気候補であると同時に最終的な勝ち目は薄いという状況は、ルペン氏の戦術に大きな影響を与えている。決選投票で過半数獲得を目指すルペン氏は、極右政党の党首として極端な過去の言動と政治的立場を不安視する有権者の警戒感を和らげることに力を入れてきた。

問題は、彼女の計画通りに行かなかったことだ。

ルペン氏は、今回の大統領選で元大統領のニコラ・サルコジ氏と現職のフランソワ・オランド氏との再戦を望み続けてきた。しかし両氏は早い段階で選挙戦から脱落した。オランド氏は再選に向けて出馬せず、サルコジ氏は予備選挙を勝ち抜けなかった。ルペン氏はエスタブリッシュメント(既得権益層)との一騎打ちではなく、自身を含めた4候補による選挙戦を闘うことになった。

現在支持率が急上昇しているのはジャン=リュック・メランション氏だ。彼はポピュリストを自称し、アメリカ大統領選で旋風を巻き起こしたバーニー・サンダース上院議員と自身を重ね合わせている。保守系の統一候補フランソワ・フィヨン氏は妻や子供への不正給与疑惑でつまづいた。一時期支持率トップに立ったエマニュエル・マクロン氏は、元投資銀行員で過去には社会党に所属しており、オランド政権では2年間経済担当大臣を務めた。

選挙戦の状況は劇的に変化してきた。一時はルペン氏が約3分の1の票を集めると見られていたが、ハフィントンポスト・フランス版の世論調査によると、現在は支持率で2位となっており、下位の2候補に対するリードもわずか3ポイントという状況に置かれている。

「彼女は国民戦線所属の候補者として、大統領選での新たな記録を打ち立てることになるでしょうし、あらゆる選挙を含めても国民戦線にとっては歴史的な記録となるでしょう。しかし世論調査での彼女の勢いは衰えています」と、調査会社「Elabe」の政治研究部門責任者イヴ=マリー・キャン氏はハフィントンポスト・フランス版の取材にこう語った。「世論調査では、2月の時点でルペン氏の支持率は28%でしたが、現在は22〜23%。ルペン氏は選挙期間中に勢いをつけられていません」

2017年のマリーヌ・ルペン氏は、2002年に有力候補として大統領選に出馬しながらも、第1回投票までの選挙活動を怠ったために敗れたリオネル・ジョスパン氏と同じ道を辿るのだろうか? ルペン氏がそうなる可能性はほとんどないとはいえ、今の状況では可能性はゼロとはいえない。

決戦を間近に控えた今の段階で、さらなる支持率の低下を防ぐため、ルペン氏はここ10日間ほどで戦略を変えたようだ。彼女は基盤強化のために鋭く右に舵を切り、国民戦線の中核的主張である「フランス人としてのアイデンティティと、移民との闘い」というメッセージを一層強く打ち出した。19日夜に行われたマルセイユでの選挙集会でルペン氏は、その点を強く主張した。

この集会には、ルペン氏の姪マリオン・マレシャール=ルペン氏も参加した。マリオン氏は今回の選挙戦にはほとんど登場してこなかったが、ルペン氏が主張を軟化させる以前は国民戦線のシンボル的存在となっていた。さらに最近のルペン氏は、合法的な移民の受け入れを早急に一時停止することや、予備兵を再招集してフランス国境の警備を強化することなどを公約に掲げた。

さらにフランス各地の集会でルペン氏は「宥和路線」のベールを捨て去り、挑発的な演説でターゲットとなる有権者の再動員を図っている。

「私が大統領なら、モハメド・メラのような人物は現れなかったでしょう」とルペン氏は最近行われた集会で、2012年にトゥールーズで7人を射殺した犯人の名前を出してそう語った。「バタクランやスタッド・ド・フランスの移民テロリストも出てこなかったはずです」と、ルペン氏は2015年11月にパリで起きたテロ事件も引き合いに出している。

ルペン氏はフランスによるアルジェリアの植民地化にまで言及し、国家としてのアイデンティティを煽る作戦に出た。「植民地化は多くのものをもたらしました。特にアルジェリアでは、病院や道路、学校が建設されました。誠実なアルジェリアの人々もそのことを認めています」と、ルペン氏は4月上旬、フランスのテレビ局「BFMTV」に出演してそう主張した。

■ 第二次大戦中にユダヤ人を一斉検挙した「ヴェル・ディヴ事件」の責任を否定

ルペン氏の失速は、9日のインタビューがきっかけだった。

フランスのテレビ番組「La Chaîne Info」のインタビューで、ルペン氏は第二次世界大戦中のパリでフランス警察がユダヤ人を一斉検挙した「ヴェル・ディヴ事件」についてフランスの責任を否定した。

ヴェル・ディヴ事件とは、1942年7月16日から17日にかけて1万3000人以上のユダヤ人が一斉検挙され、ヴェロドローム・ディヴェール競輪場に収容された事件のこと。検挙されたユダヤ人の多くが、その後アウシュビッツ強制収容所に送られ死亡した。

ルペン氏は番組内でこの事件で果たしたフランスの役割について、「フランスにヴェルディヴの責任があるとは思いません」と語った。

「一般的に、責任がある人たちがいるとすれば、それは当時権力を持っていた人だと思います。フランスではありません」とルペン氏は主張し、フランス全体ではなく検挙したヴィシー政権だけが責任を負うべきとの考えを示した。

ジャック・シラク元大統領が1995年に謝罪し、フランソワ・オランド大統領も同様に謝罪したのと比べると、ルペン氏のコメントは著しく対照的だ。

ルペン氏はシラク氏やオランド氏の謝罪について、「歴史の暗部だけを見て、我々の子供たちに、フランスを批判する材料を教えているのです」と語った。

対立候補のマクロン氏はBFMTVに、ルペン氏のコメントについて「マリーヌ・ルペン氏はジャンマリ・ルペンの娘であることを忘れていた人たちがいる」と批判した。

国民戦線の創設者で、娘のルペン氏に除名されたジャンマリ氏は、「ユダヤ人を殺すのに使われたガス室は歴史上ささいなことだ」と主張し、人道に対する罪に異議を唱えたとして2度有罪になっている。

ユダヤ人の国際組織「世界ユダヤ人会議」(WJC)フランス支部は、ルペン氏のコメントを批判した。

ユダヤ人組織を統括するCRIF(在仏ユダヤ系団体代表協議会)は「タイムズ・オブ・イスラエル」に声明を発表し、「こうした発言は、1995年にフランスのユダヤ人の強制移送の責任を認識し、記憶を選別せず、歴史に向き合ったフランスに対する侮辱だ」と述べた。

この発言で集中砲火を浴びたルペン氏はその後、2012年の大統領選で躍進のきっかけとなった「移民とテロ」を結びつける戦術を再開させている。

「ルペン氏の支持基盤は非常に強固で、縮小はしていませんが、新たな支持層を獲得できていません」と、世論調査の責任者イヴ=マリー・キャン氏は語った。「2012年にサルコジ氏を選んだ有権者たちは、自分たちの意思を長い間表明しませんでした。フィヨン氏を支持しないという層は意思表示を始めていますが、ルペン氏はその層をあまり取り込めていません」

ルペン氏は、4月23日の第1回フランス大統領選挙で、他の候補者と戦う予定だ。その選挙のトップ候補者2人が、5月7日の最終選挙で大統領の座を争う。今のところ、フランスの有権者の4分の1が、23日の第1回投票で誰に投票するか決めかねている。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。




仏大統領選はポピュリズムによる「新たなフランス革命」か
 田中 均 :日本総合研究所国際戦略研究所理事長
 DIAMOND online - 2017年4月19日
 

 フランスの大統領選挙は4月23日に第1回投票が行われ、第1回投票で過半数を得る候補者がいれば決定、さもなければ5月7日に上位二名による決選投票となる。過去に第1回の投票で決まった例はなく、常に2回の投票が行われてきたが、ここに来て、選投票でル・ペンが最終的に勝利するシナリオも喧伝されだしている。ル・ペンはユーロからの離脱やEU離脱を問う国民投票の実施、厳しい移民政策を公約に掲げており、ル・ペンが勝利することになれば、EUを軸とする欧州秩序を大きく変えるだけでなく、戦後世界の大きな分水嶺になる。

決選投票でル・ペン氏勝利も?
急進左派の急追で情勢緊迫

 今回の選挙では極右国民戦線のル・ペン党首、中道左派のマクロン前経済相、右派共和党のフィヨン元首相、左派社会党のアモン前教育相、急進左派のメランション欧州議会議員の5名が有力な候補者である。最近の世論調査ではル・ペン、マクロンが肩を並べ、フィヨン、メラションが追い上げているとされる。

 14日フランスの有力紙ル・モンドが報じたところによると、ル・ペン、マクロンが22%で首位に並び、メランションが20%、フィヨンが19%と僅差である。これまでの予想ではル・ペン、マクロンが決選投票に残るが、決選投票では極右を嫌う穏健勢力がこぞって中道左派マクロンに投票するであろうし、マクロンが大差で勝利するのではないかと見られてきた。

 しかし、ここに来て急迫している極左メランションがル・ペンと共に決選投票に残れば、ル・ペンが最終的に勝利する可能性があるというわけだ。

 こうした可能性を秘めたフランス大統領選挙の背景と影響について世界の趨勢の中で考えてみる必要があるだろう。脈々と流れていた反グローバリゼーションの勢いがポピュリストたちによって加速され、具体的形をとった最初の出来事は英国のEU離脱(Brexit)を決めた2016年6月の国民投票であった。これは11月の米国大統領選挙に引き継がれトランプ大統領の誕生となった。

反グローバル化とポピュリズム
米英では、政策実現難しく

 Brexitとトランプ大統領誕生にはいくつかの点が共通している。それは第1にはグローバリゼーションがもたらした所得格差や移民・難民の流入に対する大きな不満を持ち、現状の変革を求める人々の意識がポピュリスト的手法で政治に吸い上げられたことである。第2次世界大戦の終了後の世界を導いてきたのは自由民主主義に基づくリベラルな国際秩序を求める考えであり、米英の政治はこのような流れを主導してきた。

 ここに来て、そのようなリベラルな秩序をつくってきた既成の政党に対する不信、既成の政治指導者に対する不信、エリートに対する反感が投票に繋がった。英国の場合にはこのような意識はEUを差配するブリュッセルの官僚たちから英国の主権を取り戻そうという叫びに繋がり、「大英帝国の栄華を再び」といった強いナショナリズムが吐露されている。一方トランプ大統領も「米国を再び偉大な国に」というフレーズを用いて米国のナショナリズムを鼓舞している。

 しかしこのような反グローバリゼ―ション・ポピュリズムの勢いも時が経てば困難に逢着する。Brexitを実現していくのは英国もEU諸国も既成の政党・政治指導者・官僚であり、EUから離脱する事を英国の現実的利益に沿った形で実現していく事は途方もなく困難なことである。英国は3月末にEU離脱決定を正式にEUに通知したが、今後2年で離脱協定や離脱後の経済関係を律する協定を合意することは著しく困難であり、相当な不透明性が漂う事となる。

 米国でもトランプ政権の閣僚の多くは、グローバリゼーションから大きな利益を得た実業家や既成秩序を守る役割を果たしてきた軍人であるのは皮肉なことである。トランプ政権の政権運営に対しては伝統的政党、議会や裁判所といった既成勢力の抵抗は大きい。イスラム諸国からの入国を禁じる大統領令は連邦裁判所で効力が差し止められ、オバマケア廃止法案も撤回を余儀なくされている。また、ロシア問題を巡るFBIや議会の調査も容易ならざる事態に繋がる可能性を秘めている。

経済低迷で不安強まるフランス
2大政党への批判、極右、極左に支持

 実はフランスにおいては英国や米国以上に反グローバリゼ―ションやポピュリズムが力を持ちうる余地は大きい。経済は長期低落しており、フランスの失業率は10%(米国や英国では5%内外で推移しているのに対し)、25歳以下の若年失業率は25%に達している。フランス人ほど将来に対して悲観的に見ている国民はいないと言われる。欧州の中でイスラム人口が最大であるのはフランスである。過去1年半の間に大規模なテロ事件が3回も発生し、大統領選挙は非常事態宣言下の選挙となる。

 極右のル・ペンや独立系中道のマクロン、極左のメランションの躍進と対照的であるのは、これまでフランスの政治を担ってきた共和党、社会党という2大既成政党の不振である。このような2大政党に対する体制批判票は、時の経過と共に態度未定の3-4割の有権者にも浸透していく可能性は大きいと見るべきであろう。

 ただ仮にル・ペンやマクロンが大統領選挙で勝利してもル・ペンの国民戦線は議会で現有議席はわずか2議席、マクロンの「前進!」という政党に至っては現有議席ゼロであり、6月の国民議会選挙で定数577議席の過半数を占めることなど到底考えられず、行政については既成2大政党の力は引き続き大きい。ル・ペンの場合には反EU、反移民の姿勢が明確であり議会との対立は避けられない一方、マクロンの場合には欧州統合推進を掲げた中道勢力であり、議会との協調は比較的容易であろう。

 ル・ペンが勝利した場合には欧州の秩序は大きく変わるのだろう。ル・ペンは、ユーロの使用を禁止する、EUからの離脱に関する国民投票を就任半年内に実施、移民流入数を80%削減する、域外との自由貿易協定を廃止し、NATOから離脱するといった相当排他的な公約を掲げている。もちろん国民議会の構成次第でル・ペンの公約は実現困難となることも予想されるので、不透明な状況が招来されよう。ただ、欧州では既に英国、オランダ、オーストリア、ハンガリー、ポーランドなどで極右ナショナリスト勢力が大きく台頭してきている。これらの勢力は勢いを得てEUは分裂と崩壊の危機に瀕することとなる。

 一方、マクロンは欧州統合の推進、保護を必要とする難民を歓迎、域外との自由貿易協定を支持するなどの公約を掲げており、勝利した場合には反EU、反移民の流れは当面止まり、(9月の総選挙の結果如何にもよるが)ドイツと共にEUの再建に向けて動き出す可能性が強い。おそらくBrexitについても欧州の混乱を回避していくという方向性が出てくるのではないのだろうか。現時点で最有力なル・ペン、マクロンの主張は対称的であり、どちらが勝利するかによって欧州の流れは違う方向に大きく変わりそうである。

曲がり角のEU統合にも影響
ロシア、トルコとの関係が情勢を複雑に

 本年3月に行われたオランダの選挙では、極右自由党が第1党になることが予想されていたが、結果的には与党自由民主党が第1党の地位を保ち、反グローバリゼ―ションとポピュリズムの勢いが少し止まったという評価もされている。しかしEUを支えるフランスの大統領選挙のインパクトは圧倒的に大きい。例えばEU予算においては総額の17%とドイツの22%に次いで2位、欧州議会の議席配分においてもドイツの96名に次いで74名であり、元々欧州統合は独仏の和解のプロセスとして始まったものであるが、今日、EUの屋台骨を支えるのはこの2ヵ国なのである。

 このようなEUが大きな曲がり角にあるときにさらに状況を複雑にしているのはEUの外縁にある大国ロシア及び新興国として力をつけてきているトルコとの関係である。

 EUはロシアのクリミア併合・ウクライナ問題との関係で経済制裁を科しており、ロシアは対抗措置としてEUからの農産物輸入に制限を科している。農業大国フランスはこのロシアの対抗措置で大きな経済的影響を受けており、ル・ペンは対ロ制裁解除をはじめロシアとの関係改善を主張している。ロシアは米国の大統領選挙で行ったようにフランスの大統領選挙においてもロシアにとって不都合なマクロン候補の不利になるような情報戦を展開していると伝えられる。このようなロシアの動きは大統領選後の仏の対露政策に大きな影響を与えざるを得ない。

 トルコでは大統領権限を大幅に強化する憲法改正が国民投票で成立したとされており、エルドアン大統領に権力集中する結果、エルドアン大統領の強権的統治が危惧される事態となっている。トルコはNATOの一員であるとともにEU加盟の候補国であり、またシリア難民問題の対策を講じていく上でもEUはトルコの協力を必要とする。トルコが民主化から遠のいていく事はEUにとって好ましいことではない。ロシアやトルコとの関係を考えていく上で独仏というEUの2大大国の強い結束を必要とするが、大統領選挙はそのような結束に大きな影響を与える。

歴史の分水嶺となる選挙
国家の復権か、グローバル化か

 思えば近代の世界は1760年代の英国の産業革命に始まった。そして米国が独立(1776年)し、フランス革命(1789年)は前近代的な旧体制を打破する市民革命であったと言われる。果たして今日Brexitに始まりトランプ大統領の誕生を経てフランス大統領選挙に至るプロセスは二百数十年前のように世界の歴史を大きく変えるうねりとなるのだろうか。再び国家意識の強い閉鎖的な国際社会へと歴史を逆行していくのだろうか。それともグローバリゼーションの大きな流れを維持しつつ、開かれた社会を目指す方向に踏みとどまることができるのだろうか。フランスの大統領選挙は大きな分水嶺となるような気がする。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均) 


関連記事
スポンサーサイト

テーマ:フランス - ジャンル:海外情報

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://junskyblog.blog.fc2.com/tb.php/4521-40936cc2
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad